花嫁に読むラブレター

 瞼の裏に、ステイルの顔が浮かぶ。いつも無愛想で、感覚という感覚をどこかに落としてきたのではないかと、いつか本気で心配したくらい表情の乏しいステイル。けれど、たまに、本当にたまに見せる微笑みは、だからこそマイアを虜にした。また見たい、とあれこれ案を巡らせたものだ。

 山羊の餌やりを誰よりも早くにやってみせたり、ステイルの着替えを丹念に洗ってみたり、本当ならばステイルが当番だった草むしりだって、マイアはやってきた。そのときのステイルの様子や声が、次々に浮かんだ。

 昨日届いた手紙には、傭兵のことなんて、一言も書かれていなかった。

 もう自分が、ステイルたちのいる「家族」とは離れてしまったのだと、無関係だと暗に言われているようで、目尻に涙が浮かんだ。

「あんたを心配させたくなかったから言わなかったんじゃないかい?」

 マイアの不安を悟ったように、マリーおばさんが静かに諭すように囁く。だが、その優しさが余計にマイアをみじめにさせ、頬に伝う涙を止めることができなかった。

 喉から嗚咽が漏れたとき、マリーおばさんが乱暴な手つきでマイアを抱きしめた。ほんのり衣服から乳の匂いがする。懐かしい匂いだ。

 マイアは、しばらくマリーおばさんの腕の中で隠れるように泣いた。

 長い間、レナータが見ていたことも気づかずに。
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