花嫁に読むラブレター
救われた気分だ。
歌があれば、どんな言葉が聴けたのだろう。
勿体ない、と思う反面、自分の想像を作り上げて、架空の物語の中に浸れるのも悪くない、とマイアは目を閉じた。
この瞬間は、ステイルのことを本気で忘れられた。
何度も――何度も胸に誓ったはずの思い。ステイルのことは、忘れようという気持ちを一瞬で為してしまえる音楽が、マイアのすぐ隣にいつもあればいいのにと思った。
今度こそ、本気でステイルから離れなくてはいけない。
もう「家族」としての繋がりも薄い。十何年と一緒にいたマイアに、自分が傭兵団に入ったという、事実すら伝えてもらえなかった。とても悲しく、なぜか孤独を感じた。
「マイアさん」
「わっ」
口の中で音楽を囁いていたマイアは、突然の呼びかけにびっくりして思わず声をあげた。
人の賑わいから離れ、木陰に隠れるようにして座り込んでいたマイアは腰を浮かせ、振り向く。ユンが陽だまりのような笑顔とともに、手を差し出した。