花嫁に読むラブレター
「な、なんで? 何もなかったわ……」
ユンの気迫に思わず言葉が絡まる。けれど、マイアは本当に身に覚えがない。むしろ人と接触を頑なに避けていたマイアは、誰かと言葉を交わした回数のほうが少ないくらいだ。
「でも、泣いた痕がある」
ユンの温かい指先が、マイアの頬を撫でるようにして涙の跡を拭った。
「ち、違うわ。これはマリーおばさんと話をしていて……、そう、昔話をしていたのよ。あまりに懐かしくなって。それで思わず……」
俯き、マイアは顔を赤らめた。額にじんわりと汗がにじむ。
自分でも安っぽい嘘だと思う。きっと賢いユンなら、すぐに嘘だと気づくはずだ。そう思ったら、羞恥心で体が熱くなった。
しかし、ユンは長く深い息を吐き、項垂れるような体制のまま、視線だけを上げてマイアを見た。その目は心から安堵しているとわかる、穏やかさがあった。
「よかった。本当によかった――」
マイアは思わず言葉をつまらせ、無言でユンを見た。
何をそんなに不安に思うのか、何にそんなに安心したのか、全然わからなかったから。けれど、ユンの様子を見ていて、真剣に心配してくれていたのだとわかると、ほんのり胸が温かくなる。