花嫁に読むラブレター
物取りだったらどうしよう。刃物を持っていたら……?
恐ろしくて逃げ出したい気持ちを無理やりに押し込め、ゆっくりと、音をたてないように扉に近づいた。
この場から去って、誰かを呼びに行くことも考えたが、その間に部屋の中にいる者がいなくなるのを想像したら、もっと恐ろしかったのだ。
知らず知らずに息を止め、マイアは激しく暴れる鼓動の音を感じながらそっと中を覗いた。
長い黒髪の後ろ姿。
見覚えのある後ろ姿に、身の危険を覚える恐怖は消えたものの、代わりに、抑えきれぬ昂りが胸を叩いた。今にも大声で罵って、その艶やかな長い黒髪を掴んでやりたかったが、マイアは必死にこらえて、じっと息をひそめてその姿を見つめていた。
レナータが、いる。
マイアに言伝がありそうでもなければ、眠る前の飲み物を持ってきたわけでもなさそうだ。何事もない風で、声をかければいい。そう思う心もあったが、なぜかそうさせない雰囲気が、レナータの後ろ姿から伝わってきたのだ。やましさをはらんだ、密やかな行いだろうと推しあてた結果、マイアは黙って彼女の行動を見守ることに決めた。