花嫁に読むラブレター

(……明日にしよう)

 マイアが部屋に戻る決意をしたそのとき、マイアの耳にもはっきりとカーヤの声が聞こえた。扉のすぐ近くでの声だ。

「それではユン、何かあったら、わたくしめを呼ぶのですよ!」

 声が終わらない内に扉が開き、振り返ったカーヤがマイアの姿を見つけると、声をあげて驚いた。ぶつかりそうになるところを、寸でのところでなんとか免れたものの、慌てて引き下がろうとした拍子に、カーヤは後方に倒れるようにして転んだ。

「ご、ごめんなさい! ノックをしようとしたら突然扉が開いたものだから……」

 マイアはカーヤに駆け寄り、苦し紛れの言い訳をした。

「と、とんでもないことでございますよ! 奥様にもいつも怒られちゃうんです。『ちゃんと前を見なさい』って」

 カーヤはずれた眼鏡を直しながら立ち上がり、「それでは今度こそ本当にお邪魔しました。あ、マイアさんもごゆっくりです」

 カーヤが扉を閉めると、静かに沈黙が流れた。

 まだ、この部屋にきてユンの顔を見ていないことに気づく。カーヤの去った後を見つめていたマイアが、振り返りユンを見る。

 最後に会ったときから、随分と痩せたユンがマイアを見て微笑していた。
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