花嫁に読むラブレター

「マイアさんに渡したいものがあるんだ。さっきカーヤに持ってきてもらった」

 ユンは枕の下に手を伸ばすと、ひとつの鍵を手にした。まだ新しいものらしく、錆も曇りもない、光に反射して輝く鍵。それを、マイアに差し出した。

「……何?」

「ずっと前から作らせていた家が完成した。そこをマイアさんにあげる」

「どういうこと?」

 受け取ろうとしないマイアの手を掴み、手のひらに鍵を落とした。ずっしりとした重み。鍵の重さだけではない重さが、マイアの表情を曇らせた。

「マイアさんとぼくが、初めて話した場所。わかる?」

 あ、と呟くよりも早くに、脳裏にはひとつの景色が映し出されていた。

 古びたベンチの前に広がる泉。春にはたくさんの小花が辺りを彩り、立ち込める濃い緑の匂い。風が湖面を揺らし、陽の光が泳ぐ魚の鱗を照らす。きらきらと、宝石箱のような泉。背を見上げれば、丘の上に建つ、大好きな孤児の仲間たちが暮らす小屋がある。ここのベンチに腰を掛け、何度も街を見下ろした。叶わない都会の暮らしにあこがれを抱き、妄想に頬を上気させるのがマイアの日課だった。

 マイアの成長を見守ってくれた泉だ。
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