花嫁に読むラブレター
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「……マイアさん、さっき馬車に乗ったって――ユン、聞いてるんですか?」

 ユンは、窓の外を眺めていた視線をカーヤに戻すと、泣きそうな顔で問う。

「ねえ、カーヤ。マイアさんはもう戻ってこないかな?」

「そりゃあ、あんなことを言われたら、わたくしでしたら戻ってきづらいですねえ」

 カーヤを部屋に呼びつけ、マイアとの間に交わされた会話を目に涙を溜めながら語った。おそらくその会話を思いだし言っているのだろう。ため息交じりに、責めるような視線が眼鏡の奥からユンを覗く。

「本当は二人で医院を作るために建てた家だってことも言わないまま、そりゃあ勘違いされても仕方ないですよ!」

 父、クラウスの元で医師の勉強をし、いずれはマイアと二人でひっそり医院を開くつもりでいた。貧しいものたちからお金をもらうつもりはない。それでも十分二人でやっていけるくらいの資金は貯まっている。ただ、気がかりだったのは、街から離れていることと、長い坂道を登ってこなければ、辿りつけない場所だということだ。しかし、あの場所はどうしても譲れなかった。マイアがあの場所を本当に好きだと知っていたから。
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