花嫁に読むラブレター

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 街に馬車が到着すると、無理を言ってマイアはそこから馬車を下りて歩いた。車輪の音が喧騒に紛れて遠ざかり、懐かしい景色に不謹慎だと思いながらも心が躍った。

 何年経ったのだろう。知らない店が、見渡せば一件、二件と増えている。立ち並ぶお店や家、こんなに背が高かっただろうか。こんなに色あせたレンガ色をしていただろうか。見知った名前の店舗の前を何件か通り過ぎ、マイアはまるで新しい街にでも来たかのようだった。

 ちょうど、目の前に赤茶と黄土色のレンガを交互に組んだ家のようなお店が見えてきた。入口扉に、モミの木で作ったリーフが飾られている。甘い香りと、珈琲の香ばしい香りが煙突の屋根から煙と一緒に漂ってきていた。

 懐かしい。ユンと初めて訪れた場所。デートらしいデートと言えば、このお店で一緒にケーキを食べたことだ。

 しばらく入口を見つめていると、店員さんの「ありがとうございました」という元気な声と同時に、お客さんだろう、若い男女が扉を開けて出てきた。扉が閉まると、どちらからともなく、固く手を繋ぎ笑顔で話し始めた。目の前のマイアの存在など、初めから目に入っていない様子である。若い女性の口から「美味しかったね」と本当に嬉しそうな声が聞こえてくる。
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