花嫁に読むラブレター

 ユンとお店を訪れたとき、周りからは同じように見えていただろうか。仲のいい、恋人同士に。

 もう、戻れない。ユンはステイルのこと、全部気づいていたのだろう。知ってもなお、口に出して咎めはしなかった。いつか、マリーおばさんに「あんたはわかりやすい」と言われたことを思い出す。きっと、全部わかった上で、マイアを求めてくれた。今更ながらに、深い愛情を感じ、マイアの視界がゆがむ。鼻を啜り、こぼれる前の涙を拭うと、街を背にして歩き出した。



 坂道になっている獣道を幾度と越え、ようやく舗装された道が現れたとき、マイアは深い息を吐いた。頬や額に枝が刺さり、糸のような傷をいくつも作った。小さな虫が、荒い息を吐く口の中に何度も飛び込んできては、吐きだした。幼い頃、なんてことはない、些末だと吐き出した虫を探したものだ。殺してしまってはいないだろうか。そんなことを考えながら。だが、見つけられないまま、再び歩き新しい傷をいくつも作る。街に買い物へ行く度、そうやってマイアの顔に傷が増えた。次の日の朝、顔を洗う水桶に映った自分を見て驚いたのも一度や二度ではなかった。今はそのどれもが苦痛でしかたなかった。顔に傷を作ることも、口の中に虫が入ることも。湿った土の上を歩くたび、きれいな靴が汚れていく様も、本当に嫌で仕方がなかった。
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