花嫁に読むラブレター

 誰だろう。だが、起きて確認することができない。体が動かないだけではなく、恐怖に身が縮んだ。布団を頭からかぶり、視界という視界を全て闇に呑ませる。寝たふりをすればいい。こんな場所に、盗るものは何もない。そうわかれば、出ていくだろう。

 足音がさらに近づき、マイアのいる寝台で止まった。

 鼓動の音が布団の外に漏れていないか、それだけが心配だった。

「……マイア?」

 布団からはみ出た長い髪を引っ張られた。

 聞いたことのある声。

 でも、そんなはずはないのだ。高熱にやられ、幻聴でも聞いているのかもしれない。そうでなければ、おかしい。この声は、だって忘れることがなかった声。

「マイア、だよね?」

 涙がマイアの顔を濡らした。

 遠慮がちに布団を引き下げ、声がマイアの姿を見て「やっぱり」と安堵する

 そんなはずはないのに。

 伸びた黒髪が、男性のうなじから流れていた。

 少しだけ焼けた肌。前よりもがっしりとした体つき。それでも華奢には変わりなく、やっぱりマイアは羨ましく思う。
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