花嫁に読むラブレター
「なんで泣いてるの?」
声がおかしそうに笑った。
昔、欲しくてたまらなかった優しさが、声に滲んでいる。あんなに不機嫌に、無表情だった彼は随分と柔らかくなって戻ってきた。自然な笑顔が、彼の顔に貼りついている。
「……ステイル、だって、あなた死んだって……」
「失礼だな。生きてるよ。ほら」
そう言って、マイアの腕を掴むと、震える指先を自分の胸に当てた。どくどくと、血が流れる音。鼓動が、ステイルの中を走っている。ちゃんと、生きている。
「でも、なんで……?」
「死にかけた。でも助けてもらったんだ。今はその人のところで生活をしている」
マイアの腕を下ろし、寝台の隅に自分も腰を掛ける。
「アルヴィオンからずっと離れた国にいる」
ステイルはマイアを見下ろし、真面目な顔で言った。
「マイア。――僕と一緒に暮らさない?」
ステイルの顔が近づき、マイアの真上にきた。影がマイアを覆う。
綺麗な瞳。
どんなときでも、ステイルの目は輝きを失ったことがない。強い者の目だ。それを恐ろしく感じたときもあった。嘘を言えば、すぐに見破られ、ただ無言でマイアを見つめる。どんな叱咤の言葉より、マイアには堪えた。軽蔑の視線が、何よりも怖かった。
あのときから、変わらない。