花嫁に読むラブレター

 それもそうだ、とマリーは深い皺をきざみこみながら笑った。それでもヘレンを部屋から追い出そうとする気持ちは、なんとなくマリーにはわかった。

 大人しくしていることが大の苦手で、ほんの数秒黙るだけでも我慢ができない。家の中で料理の手伝いをするよりも、外で動物の世話をしたり、山の中を駆け回ったりするほうが大好き。大きな瞳は勝気な性格をよく映しており、いたずらが成功したときの笑い方なんて、小さい頃の母親にそっくりだ、とマリーは内心で苦笑を浮かべる。

 ヘレンが部屋にいたのでは、手紙なんていつ書き終るかわかったものじゃない。それでも可愛くて仕方ないのだろう。ヘレンの話題を出せば、いつも父親は頬が落ちそうなほどの笑顔になる。

「そのうち父さんに文字を習いな。それよりも今はあたしの腰に塗る薬を強いのにしてくれって、頼んでくれやしないかい」

 マリーは、痛む腰に気を使いながら、隣のヘレンの手を握った。
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