花嫁に読むラブレター
そのすぐ後、ステイルの予想通りアルヴィオンはアルヴィオンではなくなった。
マリーおばさんやブラウンおじさんの空気を近くに感じると、いつもそのときのことが鮮明に浮かんでくる。まるで昨日のことのように。
マイアは再び洗濯物を畳み始める。
入口を蹴飛ばすように入ってきたヘレンが、大声でユンを呼んだ。しばらくすると、奥の部屋からレムを先頭に、ユンも続いて出てくる。ヘレンが、レムが手にしている手紙を素早く見つけ頬を膨らませた。レムに「わたしに貸して」と手紙を指差し言うが、レムはこれだけは絶対譲らない。固く手紙を握りしめたまま首を横に振る。昨日と同じやりとりに、マイアの頬が静かに緩んだ。
一方的にヘレンがレムに言い寄る喧嘩が多く、そんなとき必ずレムは折れる。傍観しているこちら側から見ても理不尽だと思うことでも、レムは決して争いに挑もうとしない。穏便に、すっと身を引く。弱いといってしまえばそれまでだが、心根が優しいレムは、誰かと口論したりするのを極端に嫌がった。ふたりに平等にわけたおやつをヘレンがレムに欲しいとせがんでも、躊躇いもなく渡してしまう。そんなレムが唯一首を縦に振らないのがこの手紙だった。