花嫁に読むラブレター
部屋着のまま飛び出したマイアは、外の空気の冷たさに身震いをした。
自分の体を抱きしめ、震える指でベンチの雪を払う。勢いよくベンチに腰をかけると、お尻からじんわりと冷たさが駆け上る。ベンチの上で膝を折り、頭を抱え込む。かたかたと指が震えるが、首飾りだけはしっかりと握りしめていた。
首飾りの宝石にも似た湖。青く澄んだ水は、今はない。分厚い雪に覆われて、辺り一面平らな土地が広がっていた。ここに湖があったなんて、言われなければわからない。視界のすみを、今もちらちらと雪が舞う。また、湖を隠してしまう雪が深くなるのだ。
この場所が大好きなマイアにとって、今の季節は面白くない。
だが、雪は嫌いではない。特に夜の雪は、好きだった。街の家から洩れる光と、空に見える月の光が、積もった雪をぼうっと青白く浮かび上がらせる。現実味の薄い景色の中に、自分が立って存在している不思議。夜が見せてくれる静謐な空気と、音なく舞い降る雪が今までの出来事を全て忘れさせてくれる。胸に抱いていた不満も悩みも、すうっと氷が溶けるように、静かに消えていくのだ。