花嫁に読むラブレター
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 アルヴィオンはとても豊かな国だ。

 富裕層が多く、個人の有する貯蓄額もまた多い。鉱山も多く存在するため、精密機械――とくに時計の産地で名の知れた国でもあった。農業、薬品を扱った事業も盛んで、なかでも観光業は世界で見ても精良だ。観光地周辺の飲食店の評判はもちろんのこと、宿泊施設で出される朝晩の食事も負けずと劣らない。親しい者への土産にと手に取る時計や天然石の装飾品は、男女問わず今も人気がある。馬車や、首都に向かう汽車も数分と待たずに乗れるのも好評だ。しかし、国外からの観光客が増えると、治安も決していいとは言えないのが今のアルヴィオンだった。それゆえに身を守るため土地を守るために、傭兵を雇う貴族も珍しくはないという。中立を宣言しているアルヴィオンが、日に日に軍事力を上げていくことに対し批難の声もある。特に、裕福な貴族ら、一個人が持てる範囲を超えた武力を指弾するものが多かった。

 マイアたちの住むアルヴィオン北部は、そんな富裕層の者たちが娯楽のためにと別宅を建てることが多い。ユンが住んでいる邸宅も、本来は現在国王の別宅だったのだという。以前、ユンが笑いながら話してくれた。

 そんなユンの後ろを、隠れるようにマイアは歩いた。
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