花嫁に読むラブレター

 普段街に行くときは、ミリア姉さんの雑貨屋さんにしか足を運ばない。今歩いている、中心部になんてもう何年も来ていなかった。

 実際丘の上から何度も眺めて様子を知っていたはずなのに、いざ自分がこの地に立ってみると、なんともいえない居心地の悪さを感じた。すれ違う人たちはみんな綺麗に着飾っていて、女性も男性もとてもいい匂いがする。表情はみんな硬く、ステイルの無表情とはまた違う虚無を感じた。

 石畳の広い道をどんどん進み、いくつもの店を通り過ぎたところでユンが止まり振り返った。

 赤茶と黄土色のレンガを交互に組まれた建物は、お店というより一軒家のような佇まいだ。入口にはモミの葉で作ったリーフが飾ってある。「命の木」「復活の木」としてこの土地でも大切にされてきているモミの木。冬になるとこうしてリーフを玄関先に飾る家は多い。早く春が訪れますように、という意味がこめられているんだよ、と教えてくれたのはステイル。また、お店の軒先に飾るのには、他にもお客さんがたくさん来ますように、って願いもあるのだということもそのとき知った。
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