花嫁に読むラブレター
冬の寒い日、モミの葉っぱを湯船に浮かべて入ると、とてもぽかぽかするのだ。他の店舗から離れているせいか、それとも外観から受ける懐かしいような雰囲気のせいか、マイアは湯船にたくさんのモミの葉を浮かべて浸かったときの温かくほっとした気持ちに似たものを感じていた。
「ここのケーキ美味しいんだよ」
言いながら、ユンは数段の階段をのぼり、入口を引いた。
カラン、と店内に鐘が重なった音が響く。
同時に、女性店員の陽気な声が聞こえてきた。
ユンは店内を見渡し、一番奥、窓際のソファーになっている一角を指差し、「あそこでいいかな」って訊く。マイアは頷きならが、気持ちはすでに辺りにたちこめている美味しそうな匂いのことで頭がいっぱいだった。
ハーブやミルク、それにお酒の香りもする。香ばしい匂いは、パンを焼いているのだろうか。蜂蜜とバターをたっぷり練り込んだお菓子の匂いもする。店の入り口近くのカウンターの奥には、色とりどりの瓶が飾ってあった。お酒や、飲み物に入れる香りづけのシロップ。薄暗い店内で橙色のランプに照らされ、それらがきらきら宝石のように見えた。忙しそうに店内を早足で動き回る女性店員も、カウンターの中でカップに飲み物を注いだりパンを切ったりしている顎鬚が立派な男性も、見ているこっちが気持ちよくなるような笑顔を浮かべていた。マリーおばさんが夕食時、忙しいと言い苛々している様子と全然違う。