花嫁に読むラブレター
「は、恥ずかしくてそんなこと言えないよ」
涙目で訴えるユンを無視して、マイアは倒れ込むように腰をおろした。
八つ当たりもいいところだ。
けど、ひととおり怒鳴り声をあげたことで満足したのか、マイアは鼻から大きく息を吐くと、妙にすっきりした表情で冷めてしまったミルクをひと口飲んだ。
カップを置き、マイアは開き直ったように口にする。
「結婚するんじゃないの? 恥ずかしいなんて言っていたら一緒に暮らせないじゃない」
ユンは意外なものでも見るかのように、口を半開きにして目をしばたかせた。
そして、「うん、そうだね」と聞き間違えかと思ったほど小さな声で呟く。ふわふわの髪の下からのぞく耳を真っ赤にさせながら。
「じゃあ改めて訊いてもいいかな。――ぼくと結婚してくれる?」
「仕方ないわね。頼まれてあげるわ」
顎を突き出しながらそう言うマイアを見て、ユンは楽しそうに微笑んだ。
マイアの心に、もう迷いはなかった。
なぜだかステイルに謝らなくてはいけないという気持ちも今はない。それどころか、マイア自身、驚くほどすっきりしていた。
雨上がりの空、大地を照らす燦々とした太陽のごとく心は晴れあがり、今までに感じたことのないほどの清々しさを極めていた。
そうして、結婚の準備を進め、いざマイアがユンの家に招かれることになったのは、春もずいぶん過ぎた頃であった。