花嫁に読むラブレター


 窓の外で鳥がさえずっている。

 春とは名ばかりで、依然として寒波は過ぎ去ってくれず、マイアは毛布にくるまりながら、随分と長い時間その声に耳を澄ませていた。

 顔半分だけを毛布から出して、窓をちらりと見た。

 身体を震え上がらせるほどの冷気を想像させる、暗い朝は過ぎたらしい。一面に覆っていた霧もすっかり晴れて、暖かな陽の帯を部屋の中に落としている。光の道をゆっくり進むように、埃がふわふわ舞っているのがわかった。もうこの部屋で過ごすのは最後なのだと思い、昨夜は遅くまで掃除に勤しんでいた。普段ならば机の上ですら、本や紙切れで散らかし、マリーおばさんに叱咤を受けるまで決して自らほうきを持たなかった。そのマイアが、机や椅子、さらにはベッドをずらしてまで雑巾を滑らせたのだ。なかなか眠る気配のないマイアを心配してか、それとも珍しいこともあるものだとただ物見に来たのか、マリーおばさんが何度も部屋の入口を叩いた。
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