花嫁に読むラブレター

 なかなか寝つけなかった夜を思い、憂鬱だった気持ちが少しずつ晴れていく。みんなに笑顔で送り出してもらう大切な日に、目の下に影を作りたくなかったのだ。けれど杞憂もなくなり、マイアの顔に笑顔が戻る。

 いつものマイア。

 そして、この家で過ごす、最後のマイア。

 髪も、いつもより丁寧に手入れをしたおかげか、少しだけ落ち着いている。使い古した箒の先のような広がりもなければ、寝癖だってない。何もかもが、完璧。鼻筋がもう少し通っていれば、なんて贅沢な悩みは今のところ忘れておこう。

 大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐いたところで鏡の中にいるマリーおばさんと目が合った。驚いて振り返ると、部屋の入口の柱に体をもたれかけさせ、じっとこちらを見つめていた。とても穏やかな笑みを浮かべながら。

 初めてこの家にやってきて、おばさんがマイアに笑いかけたときのことを思い出す。マイア、よろしくね。と、大きな手で頭を撫でられたときの、ほっとするような、それでいて泣きたくなるほど胸が熱くなる気持ち。

「珍しいねえ。あんたが自分から起きるなんて」
< 82 / 227 >

この作品をシェア

pagetop