艶めきの標本箱
彼が私を抱き上げて膝の上に乗せた。
私は彼の首に手を回す。
私の唇が弱々しく呻くのを嬉しそうに眺める瞳。
ごつごつした手を動かしてゆく。
「だって、ほら。
お腹じゃなくて…ここが、紅くなっているじゃないか。」
慣れた指に私は大きく息を吐き出しながら彼にしがみつく。
私の花は再び蜜を蓄え始め指に応える。
吐息に声が混じり始めた私を塞ぐように、彼が唇を重ねる。
鼻から抜ける高い声に被せるように、唇を少し離して彼は言った。
「僕は君の口紅の50本の内、何本くらいを食べているのだろうね。」
私は答えずに、唇を彼に押し付けて舌を泳がせ言葉を遮る。
そうね、多分…。
蕩ける花と別なところで、考えている私がいる。
このままいけば、1本分くらいにはなるかもしれないわね。