オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「今さらなんの用?って訊いたところでより戻しに来たんだろうしなー……うーん」
「俺はお前じゃなくて楓鹿と話しに来たんだよ。離れろ」
「離れたいのは山々なんだけど、高遠が俺を盾にしちゃってるんで……。ていうか痛い。高遠、トング食い込んでるから。一旦放さない?」
はい没収ー、と。どこか能天気にも見えるこの男はいったい何者だ。無意味にトングを開閉させているあたり、元カレをナメくさっている気はするが。
警戒心の強いバンビ先輩がこんなに男にひっ付くなんて、見たことねえ。
「とりあえずさ、今日のところは帰ってくんないかなぁ。高遠こんなんだし、アンタが粘ったところで、」
「なんで関係ねえお前が出しゃばってくんの? 俺がここまで来たんだから、ふざけてねえことくらい分かんだろ」
……妙な空気になってきたな。これって修羅場?
だったら、なしてバンビ先輩はその男に頼ってんのわ? どうしたもんかなって顔に書いてあんだけど?
「んー……。高遠はさぁ、すげえ可愛いし、自我も気も強いほうだけど、人並みに傷付いて泣くし、平気な振りもするんだよね。他の女子より特別なことなんてそう多くないと思う。だから、高遠の元カレだからって特別扱いされるわけじゃないんだけど……言ってる意味分かるかなー」
うーん、と頭を掻く深山先輩は、ちらりと自身の背後に隠れるバンビ先輩を見てから、元カレに視線を移す。