ショコラ SideStory


 それから、ついつい気になって窓の外を眺めてしまう。

 娘ちゃんは木曜日も松川塾があるらしく、外階段を降りてきたなと思ったら、しばらく階段の下で突っ立っていた。

それが三十分たってもそのままだったから、心配になって事情を聞くと、お母さんはお仕事で五時を過ぎないと迎えに来られないのだそう。


「だったら、中で待っていたらいいわ」


 その日はちょうど店も混んでいなかったので、あたしは彼女を窓際の席に座らせた。
お客さんじゃないから、あげれるのはお水だけだけど、それでもその子は嬉しそうに笑う。


 やがて、稲垣さんが走って迎えにやってくる。


「すみません。塾で待ってるように言ったんですけど」

「あたしが誘ったんです。寒そうだったし」

「ありがとうございます。でも、今度からは塾の入り口で待たせてもらいますから」


松川先生にお願いしようね、と彼女はいい、娘ちゃんは嬉しそうに頷く。

でも、二階の部屋は一部屋だ。この子のクラスが終わった後には高学年の子たちのクラスがある。
宗司さんだって、そんなところにいつまでも残られたら迷惑だと思うんだけど。

 週末も娘ちゃんを連れて買い物袋を下げて歩いていた。
狙ったかのように宗司さんが生徒を見送りに降りてくる時間に。一言二言挨拶をして、満足したように帰っていく。

 それを見てしまったあたしは、なんだか気が気じゃない。

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