ショコラ SideStory
*
「最近あの人良く来るよね」
さり気なく宗司さんに問いただしてみると、「あの人って誰?」とトンチンカンな返事がきた。
「小学生の女の子で新しく入った子いたじゃない。あの子のお母さん」
「ああ。稲垣さんか。図書館で司書をしている人なんだ。俺、調べ物で結構図書館行くから、なんとなく話すようになって。で、塾をしているって話をしたら入ってくれた」
「へぇ」
じゃあ、ずっと前からの知り合いなんだ。
図書館とか宗司さんにはピッタリの場所だ。
「早くに結婚して早くに離婚して。結構苦労された方みたい。梨花ちゃん……あ、娘さんなんだけど、小学校入学のタイミングで友達と喧嘩したら、クラスで仲間はずれみたいにされたらしい。学校も休みがちになったんだけど、最近ようやく少しずつ行き始めるようになったんだ。遅れた分を取り戻したいって頑張ってるよ」
「そう」
「俺もできるだけ力になってやりたいって思ってるんだ」
キラキラした目でそんなこと言われたら、何も言い返せない。
そりゃ、娘ちゃんだって彼に懐くわよ。
まして、そんな大変なときに親身になって貰えたら、親のほうだってよろめくかもしれないじゃないの。
「……馬鹿」
「え? なに」
「なんでもないわ」
馬鹿はあたしだ。
宗司さんは他意なく子供に優しくしているだけなのに。何いじけているのよ。
優しい男って案外罪づくりだ。
「最近あの人良く来るよね」
さり気なく宗司さんに問いただしてみると、「あの人って誰?」とトンチンカンな返事がきた。
「小学生の女の子で新しく入った子いたじゃない。あの子のお母さん」
「ああ。稲垣さんか。図書館で司書をしている人なんだ。俺、調べ物で結構図書館行くから、なんとなく話すようになって。で、塾をしているって話をしたら入ってくれた」
「へぇ」
じゃあ、ずっと前からの知り合いなんだ。
図書館とか宗司さんにはピッタリの場所だ。
「早くに結婚して早くに離婚して。結構苦労された方みたい。梨花ちゃん……あ、娘さんなんだけど、小学校入学のタイミングで友達と喧嘩したら、クラスで仲間はずれみたいにされたらしい。学校も休みがちになったんだけど、最近ようやく少しずつ行き始めるようになったんだ。遅れた分を取り戻したいって頑張ってるよ」
「そう」
「俺もできるだけ力になってやりたいって思ってるんだ」
キラキラした目でそんなこと言われたら、何も言い返せない。
そりゃ、娘ちゃんだって彼に懐くわよ。
まして、そんな大変なときに親身になって貰えたら、親のほうだってよろめくかもしれないじゃないの。
「……馬鹿」
「え? なに」
「なんでもないわ」
馬鹿はあたしだ。
宗司さんは他意なく子供に優しくしているだけなのに。何いじけているのよ。
優しい男って案外罪づくりだ。