ショコラ SideStory
*
仕事上がり間際の時間に、ぴらぴらと注文票を眺めながら親父は半眼であたしを見る。
「詩子、この注文お前出来るのか?」
稲垣さんのクッキーの注文票だ。
親父はどこまで気づいているのか、この注文にはやたらに探りを入れてくる。
「やるわよ。クッキーはあたしの担当でしょ?」
「でも『結婚』とか字画多いぞ。やる気ならちゃんと練習しておけよ」
「解ってるわよ」
解ってる。でも。
もしこのクッキーが宗司さんの手に渡ったらと思うとやる気がでない。
ちらりと親父とマサを見ると、話題はすでにクリスマスケーキのことになっている。
ナッツ入りクリームだどうだの、形がどうだの。
負けてられないわよ。
あたしにだってあるでしょプロ根性。
「……練習するわ」
してやるとも。
完璧なクッキーを作ってやるわよ。
あたしと宗司さんの絆は、ジンクスなんかで壊れたりしないんだから。
仕事上がり間際の時間に、ぴらぴらと注文票を眺めながら親父は半眼であたしを見る。
「詩子、この注文お前出来るのか?」
稲垣さんのクッキーの注文票だ。
親父はどこまで気づいているのか、この注文にはやたらに探りを入れてくる。
「やるわよ。クッキーはあたしの担当でしょ?」
「でも『結婚』とか字画多いぞ。やる気ならちゃんと練習しておけよ」
「解ってるわよ」
解ってる。でも。
もしこのクッキーが宗司さんの手に渡ったらと思うとやる気がでない。
ちらりと親父とマサを見ると、話題はすでにクリスマスケーキのことになっている。
ナッツ入りクリームだどうだの、形がどうだの。
負けてられないわよ。
あたしにだってあるでしょプロ根性。
「……練習するわ」
してやるとも。
完璧なクッキーを作ってやるわよ。
あたしと宗司さんの絆は、ジンクスなんかで壊れたりしないんだから。