ショコラ　SideStory
＊

……威勢だけはいいわよね、ってたまに自分のことを振り返る。

親父を先に帰らせて、あたしはアイシングの練習中。
帰りが危ないやら何やら言われたけど、そこは宗司さんの塾が終わってから送ってもらうって言ってごまかした。

調理台の上には練習用のクッキーがズラリと並んでいる。

そして、出来上がっているのはその半分くらい。
しかも、その全部が失敗作でーすっていう悲しい状況。


「『結婚』とかマジで無理。ああもう、今度から平仮名カタカナ限定にしようかしら」


なんて言ったら、プロ失格だな。

そう思ってため息。
あたしってやっぱり、マサや親父に比べると決定的に何かが足りない。

まあやる気がでないのはそれだけのせいじゃないけれど。
“願いが叶うクッキー”なんて眉唾もんの噂なんかたったもんだから余計滅入るわ。

もしこれを送る相手が宗司さんだと知って、あたしの心中はかなり複雑になってしまった。

自分のクッキーが人を幸せにするって思ったら今までは嬉しかった。

だけど、あたしは自分の不幸までは願えないわ。

宗司さんはあたしの彼氏よ。
誰にも渡したくないし、渡すつもりもない。

それでもあたしはこのクッキーを作るの？


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