ショコラ SideStory

シングルマザーで必死に働いてきたんだろう。
小綺麗にしているけど正直疲れた感じは拭えなかった。だけど、それさえも母親の威厳のような気がしてくる。

あたしは自分で言うのもなんだけど容姿には自信がある。

だけど母親って、そういうのとは比べようのない何かがあるんだわ。
内面に宿る、今のあたしがどんだけ頑張ってもおそらく手に入れられないもの。


アイシングのコロネを調理台に投げ出して突っ伏した。


「……何負けた気になってんのよ、あたし」


自分の弱気が恨めしい。

どうしてこんな気持ちになるの?








 そのままあたしは寝てしまったらしい。
カンカンカンという外階段の音に意識が浮上し、入り口の鈴の音で目を開けた。


「やだ、寝ちゃった。……つか、さぶっ」


基本調理中はあまり暖房を入れない。スイーツは熱に弱いから。

それでも寝入る前は営業中の店内からの温かさがあったんだけど、今は随分室温が下がっているようだった。




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