ショコラ SideStory
*
気がついたら彼の背中で揺られていた。
「……あれ?」
「あ、気づいた? 悪いなとは思ったけど鞄の中探って鍵出したよ? マスターも康子さんもいないみたいだから」
「え? あ、家だ」
あたしは宗司さんにおぶられたまま家の玄関にいた。
ショコラを出た記憶もないくらい深寝してしまったらしい。
「店の方も一応鍵は締めたよ。このまま休むなら部屋まで運ぶけど」
「あたしの部屋は二階よ。おんぶして登るとか自殺行為」
「そんなことないよ。詩子さんは軽いし」
宗司さんはそう言うと、靴を脱いで家に上がり込んだ。
玄関と階段の電気をつけて、トントンと軽快に上っていく。
ああなんだか。
今日の宗司さん、男らしいなぁ。
広い背中は温かいし、触れてるだけでキュンとする。
小さな女の子を一人で育ててきた彼女が、彼に恋心を抱くのは分かるような気がする。
宗司さんは暖かくて優しいから。
でも。
「……ないで」
「何か言った? 詩子さん」
彼女に告白されても、揺らがないで。
あたしのことだけ、ずっと見てよ。
「……ううん」
でも言うのは、なんだかフェアじゃない気がした。
彼女の恋をあたしに止める権利ってある?
でもフラれるのを願ってクッキー作るのも違う気もする。
ああもう、頭がグルグルする。
目も回りそう。
気がついたら彼の背中で揺られていた。
「……あれ?」
「あ、気づいた? 悪いなとは思ったけど鞄の中探って鍵出したよ? マスターも康子さんもいないみたいだから」
「え? あ、家だ」
あたしは宗司さんにおぶられたまま家の玄関にいた。
ショコラを出た記憶もないくらい深寝してしまったらしい。
「店の方も一応鍵は締めたよ。このまま休むなら部屋まで運ぶけど」
「あたしの部屋は二階よ。おんぶして登るとか自殺行為」
「そんなことないよ。詩子さんは軽いし」
宗司さんはそう言うと、靴を脱いで家に上がり込んだ。
玄関と階段の電気をつけて、トントンと軽快に上っていく。
ああなんだか。
今日の宗司さん、男らしいなぁ。
広い背中は温かいし、触れてるだけでキュンとする。
小さな女の子を一人で育ててきた彼女が、彼に恋心を抱くのは分かるような気がする。
宗司さんは暖かくて優しいから。
でも。
「……ないで」
「何か言った? 詩子さん」
彼女に告白されても、揺らがないで。
あたしのことだけ、ずっと見てよ。
「……ううん」
でも言うのは、なんだかフェアじゃない気がした。
彼女の恋をあたしに止める権利ってある?
でもフラれるのを願ってクッキー作るのも違う気もする。
ああもう、頭がグルグルする。
目も回りそう。