ショコラ SideStory
「浅漬でいい。きゅうりなら冷蔵庫にある」
「え? 今作ればいいの? いいのかな。勝手に台所借りて」
「いいわよ。食べたい、お願い」
「わかった」
戸惑った声を出しながら階段を降りていく宗司さん。
こんなメソメソしてるの、あたしらしくない。
早く元気にならなくちゃ。
必死に涙を止めようとしていると、玄関先から物音が聞こえてきた。
「うわあ! なんで宗司がここにいるんだ!」
「わ、すいません、マスター。実は詩子さんが」
「黙れ! お前何新婚気取りで台所荒らしてやがる!」
「ちが、ちょっと聞いてくださいよ!」
ああ。何やら始まってしまったみたい。
止めに行かなきゃ、と起き上がろうとした時、階段を軽快に上る音がしてすぐに扉が開いた。
顔を出したのは母さんだ。
なんだ、親父と母さんは一緒だったのか。
「……あら、えっちの後とかそういうのじゃないのね?」
「なんてこと言うの、母さん」
「だって、玄関に男物の靴があったら、……ねえ? てか、具合悪い?」
「熱でたの」
「あら、鬼の霍乱。……わかったわ、休んでいなさい」
鬼って酷くないですか。
まあいいわ。
グダグダ言ってる元気も今はないのよ。
「いいからでてけ!」
「だって、ちょっと、これ詩子さんが食べたいって」
「シャラーップ! 隆二くん、大人げないことやめなさい! 詩子熱があるのよ」
結局親父が母さんに怒られて終了らしい。
ああもう。
あの人達はホント平和で羨ましい。