ショコラ SideStory
クッキーを任せるって言われた時、
親父に信頼されたみたいで嬉しかったのよ。
だからあたしなりにプライドを持っていた。
あたしだけが作れるクッキーだって、そう思えることが嬉しかったのに。
「……泣かせたのは、マスター?」
宗司さんの声にハッとする。
彼は珍しく真剣な顔で店の方を睨みつけた。
「これ持ってて」
あたしの手のひらにお漬物のタッパーを預けて、ズンズンと店に向かって歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って。宗司さん」
「いくらマスターでも、詩子さんをこんな風に泣かせるのは許せない」
「いや、でもね。あたしも悪いのよ。分かってはいるの」
引きとめようとしたあたしの手を、彼は掴んで引き寄せた。
「詩子さんが良い悪いは関係ないんだ。俺は詩子さんを泣かされたことが嫌なだけ」
目の前に居るのは、本当に宗司さん?
おかしいよ。いつもそんなに格好良くないじゃない。
あたしに怒られて、シューンとしているような人なのに、あたしが泣いてたらそんな風に強くなるの?
宗司さんはそのまま店に入って「マスターお話があります」と厨房へ入っていった。
遅れて入ったあたしに、マサが「何事?」と声をかけてくる。
「何事って言われてもなんて説明したもんだか」
分からないけど、なんだか凄く胸は熱い。
「黙れ! お前に口出される筋合いはない!」
親父の怒鳴り声が聞こえる。
宗司さん、いつもなら負けちゃって子犬みたいになるのに。