ショコラ SideStory
「黙れません。俺、マスターのことは尊敬してますけど、詩子さんを泣かされるのは許せません」
「なんだとぉ。詩子は俺の娘だ。大体、アイツがなんで悩んでいるのかお前分かっているのか」
「マスターと喧嘩したんでしょう?」
言い合う男二人。
どう言葉をかけていいか分からず見つめていると、マサが後ろから覗きこんでくる。
「女を取り合う男の喧嘩みたいだな」
「馬鹿。そんな呑気に観察してる場合じゃないでしょ」
「でも止めるの俺の役目じゃないだろ?」
ああそうですね。
この場合二人を止めなきゃならないのは間違いなくあたしですわよ。
「もうっ、二人共やめてー!」
大声で一括すると、二人は動きをピタリと止める。
そして一斉にあたしを見た。
「詩子」
「詩子さん」
「……あたしが悪かったわ。親父が言ってることは正しい。……今度のクッキーはお願いします」
ペコリと頭を下げると、親父は痛いものでも見るような顔であたしを見る。
「刑事だって親族の係る事件は担当しないだろ。それと一緒だ。別にお前の技量を疑っているわけじゃない」
「……分かってる」
あたしはね。
事の流れが分からずに、困った顔をしているのは宗司さんだ。