ショコラ SideStory
「なんか、……俺、余計なことした?」
「ううん。謝る気になれたのは、宗司さんがあたしの代わりに怒ってくれたからよ」
「時期が来たらちゃんと説明してやるよ。今は俺も詩子も詳しく言うわけにはいかないんだ」
親父はそう言うと、「詩子、開店まで少し時間をやる」と右手で二階へ行くように促した。
普段は使わない内階段から二階に上がり鍵を開けると、ひんやりとした空気に出迎えられる。
「……なんかゴメン」
宗司さんはまず暖房を入れて、あたしを温風の当たるところに連れてきた。
「俺、余計なことしたみたいだけど。病み上がりだし、心配で。特に今回は詩子さん凄く弱ってたみたいだったし」
あたしは、焦ったように言い訳を繰り返す彼のシャツを引っ張って言った。
「黙って」
「え……っ」
唇で彼の続く言葉を吸い込む。
驚いたように体を揺らせた彼は、やがてあたしの唇の動きに合わせるようにしてあたしを抱きしめた。
長いキスの後で笑うと、彼も照れたように頬を染める。
「……大好きよ、宗司さん」
「え、あ、……はは。なんかよくわかんないけど、嬉しい」
稲垣さんには悪いけど、彼はあたしに必要な人なの。
あたしを好きでいて、と願いを込めて。あたしはもう一度彼にキスをした。