ショコラ SideStory
*
そして、11月15日。親父はあたしを出来るだけ厨房にいさせるようにしていた。
マサは店内をてんてこ舞いに走り回っていて、ちょっと可哀想なくらい。
やがて、稲垣さんが取りに来て、親父は自分でクッキーを渡していた。
これから、宗司さんに渡すのかな。そう思うといつもの営業スマイルも陰る。
彼女がどういうふうに彼に告白したのか、あたしは知らない。
だけど、その夜。
宗司さんが塾の時間が終わっても全然降りてこないから、あたしはそろそろと内階段から上がっていった。
「宗司さん、いる?」
「え? 詩子さん?」
反射的に振り向いた彼は、酷く傷ついた顔をしていたから。
あたしは猫のように彼に擦り寄る。
背中にピタリとくっついて、ただ黙って彼のお腹に手を回した。
そうしたら彼は、力が抜けたようにその場にへたり込む。
「……マスターと喧嘩してた原因分かった」
「そう」
「詩子さん、あのクッキーを作るつもりだった?」
そうよ、と言ったら、あたしは彼に軽蔑されるのかしら。
親父があんな風に言わなかったら、たぶん納得出来ないまま作っていたと思う。
「そうね。あたしの仕事だって思ったし。……でも、知恵熱出るくらいには悩んでいたのよ?」
「詩子さんが作ったらうまくいっちゃうのに?」
それはジンクスよ。
あたし達、ジンクスに負けるほどやわじゃないでしょ?
笑って言い返したかったけど言えなかった。
そして、11月15日。親父はあたしを出来るだけ厨房にいさせるようにしていた。
マサは店内をてんてこ舞いに走り回っていて、ちょっと可哀想なくらい。
やがて、稲垣さんが取りに来て、親父は自分でクッキーを渡していた。
これから、宗司さんに渡すのかな。そう思うといつもの営業スマイルも陰る。
彼女がどういうふうに彼に告白したのか、あたしは知らない。
だけど、その夜。
宗司さんが塾の時間が終わっても全然降りてこないから、あたしはそろそろと内階段から上がっていった。
「宗司さん、いる?」
「え? 詩子さん?」
反射的に振り向いた彼は、酷く傷ついた顔をしていたから。
あたしは猫のように彼に擦り寄る。
背中にピタリとくっついて、ただ黙って彼のお腹に手を回した。
そうしたら彼は、力が抜けたようにその場にへたり込む。
「……マスターと喧嘩してた原因分かった」
「そう」
「詩子さん、あのクッキーを作るつもりだった?」
そうよ、と言ったら、あたしは彼に軽蔑されるのかしら。
親父があんな風に言わなかったら、たぶん納得出来ないまま作っていたと思う。
「そうね。あたしの仕事だって思ったし。……でも、知恵熱出るくらいには悩んでいたのよ?」
「詩子さんが作ったらうまくいっちゃうのに?」
それはジンクスよ。
あたし達、ジンクスに負けるほどやわじゃないでしょ?
笑って言い返したかったけど言えなかった。