ショコラ SideStory
翌朝、台所のお手伝いを申し出たあたしに、お母さんは「じゃあ」とサラダ作りのお仕事をくれた。
納戸に、雪が降るまえに掘り出したという大根が積まれていた。
これを痛む前に消費しようとするため、大根サラダは毎日のように食べるらしい。
それにしても、寒さが全然違うなぁ。家の中に居ても、足先や指先が冷たい。
「これ使うかね?」
大根を洗って、その水の冷たさにあたしが驚いていると、お母さんからスライサーを差し出される。
「のめしこきだから、すぐ楽しようとするんだぁ」
「のめし……?」
「怠けもんってことだぁね」
おばあちゃんもそんな風に言いながら目尻を細めて、あたしは言われるがままスライサーで大根を細い千切り状態にしていく。
「詩子ちゃん、なして宗司なんかば選んだが? こいなべっぴんさんなら他にもっと沢山いい人おったろうに」
不思議と、台所で一緒に立つと心の距離が近くなるのか突っ込んだ話が飛び交うようになってきた。
「そうですね」
確かに、あたしも最初はうだつのあがらない優柔不断男って思ってた。
だけど優しくて包容力があって、いつの間にか、傍にいるのが居心地良くなっていた。
「でも、あたしのギャップにたじろがなかったの、宗司さんだけなんです」
「ギャップ?」
「本当は酒飲みですし、スルメとかラーメンとか好きだし。嗜好が親父っぽいんですよ、あたし」
「しゃあ、昨日も漬物を喜んどったわね」
「宗司さん、たまに作ってくれるんです、お漬物。あたしの大好物です」
「そいがかぁ」