だってキミが好きだった
「ありがとな、菫チャン」
「……」
言い方は少しムカつくけど……。
きっと、その言葉は心からの言葉なんだろう。
ぼんやりとそう思っていると、千歳さんはいきなり笑うのをやめ、真剣な面持ちで私の瞳を見つめる。
それ程までに大事なことなんだろうか。
そう感じた私は、千歳さんと同じように真剣な面持ちで千歳さんの言葉を待ち構える。
「……一ヶ月前、アイツに会ってくれてありがとう」
――千歳さんのその言葉に、ドキリと心臓が跳ねた。
“アイツ”
千歳さんが言うその人は誰。
[一ヶ月前、“アイツ”に会ってくれて――]
……千歳さんも知っていて、一ヶ月前に私が会った人、なんて。
彼しかいないじゃないか。
真剣だった千歳さんの瞳が、過去を思い出したのか悲しくユラユラ揺れる。
それを見て、私はゆっくりと口を開いた。
「……私こそ、ありがとうございました」
意外にも出た声は小さくて。
でもこの距離だから聞こえたその声に、千歳さんは目を丸くした。
お礼を言うのは……私の方だ。