だってキミが好きだった
ふわりと笑って言えば、千歳さんは泣きそうな顔をしてくしゃりと笑った。
「……たく、言うようになったじゃねぇか」
「本心ですよ」
「……ふーん」
あ、照れてる照れてる。
首に手を置き、私から視線を逸らす千歳さんを見て、私はクスリと笑いを零す。
それは千歳さんの照れた時や焦った時に出る癖だ。
癖のこと、千歳さんは気付いているんだろうか。
もしも気付いてないんだったら言った方が良いかな。
まぁ言わないけど。
「……何笑ってんだよ」
「……いえ、別に」
「言え」
「なんでもないですよ」
「嘘だろ」
「は、……いえ、違います」
「……」
危ない。
つい“はい”って言いそうになった――って、そんなに睨まないでくださいよ千歳さん。
隣から感じる怪しむような視線に、私は苦笑いを零す。
「――まぁ良い。菫、これから言うこと……しっかり聞いておけよ?」
じとっとした目を向けていたのに、急に真剣な目に変わる。
雰囲気までさっきと何処か違う千歳さんを見て、ざわつく心を隠す様に心臓に手を置いた。