二重人格神様
距離
ーーーーーーーー…
ーーーーー……
「いのり?」
「…………」
「いーのーりー?」
「…………」
「いのりってばぁ!?」
「…へっ?」
バンッと分厚い本を閉じ頬を思い切り膨らませながら、グレン君はいじけたように私を見つめる
あ、しまった…
「ご、ごめん。ちょっと、ボーとしてて…」
あははと、頭を撫でながら言うとグレン君が口を開く
「ちょっと、じゃないよ!いのり、お兄様と会ってからずぅーと、魂が抜けたみたいだよ?」
「…うっ」
それは、否定出来ない。
実はあのあと、かなり長い間キスを繰り返し腰抜けになるほど翻弄されてしまった
別れたあとも感覚が忘れられなくて、気がつけば無意識に唇を触ったり、海鈴さんの事を考えていた
現に今も、夜になり海鈴さんが来るまでグレン君と絵本を読んでる最中だったのに
いつの間にか頭の中は海鈴さんの事でいっぱいで、こうやってグレン君に怒られてしまってる
「ほ、本当にごめんね。だ、大丈夫だから。本の続きみよう?」
閉じた本を開き絵本に視線を落とすもグレン君の顔はまだ怒ったまま
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