二重人格神様
「ほら、約束」
「…あっ」
信じられないわけじゃない。彼からは、穏やかで優しいものしか感じない
で、でも…人間のわたしが、花嫁だなんて…
「……」
なかなか彼の手に指を絡めることが出来なく、傘をギュウと握ると、黙ってみていたフェイランさんが腕を組む
「ねぇ小鳥ちゃん?悪い提案じゃなくてよ」
「……あ」
「小鳥ちゃんがもしこのまま断ったら、たぶん…身の保障は出来ない。でも海鈴様のもとなら絶対に安全。まぁ、知らない世界に行くことだから不安だろうけど…気にしても仕方がないわ」
「…それは」
そうだけど……
わたしが…神様の…龍神様の花嫁だなんて…
「あぁ、花嫁なんて言っても形だけよ?人間を神の世界におくには花嫁って立場が必要なだけだから」
「…え?」
「フェイランの言う通り。花嫁だから…なんて、想像はしなくていい。取って食べたりはしないから」
「本当ですか?」
本当に、名前だけでいいの?
「あぁ、だから、約束」
小指をさらに近づけられ、そのまま指を眺める
名前だけで、いいんだ。それで、守ってくれる…それなら…わたしは…生きたい
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