不思議電波塔
由貴は涼を見つめると「キスして」と言った。
涼が由貴にキスをすると、由貴は涼に腕を絡めてきた。
「会長?」
「──」
引き寄せる腕の力に、由貴の上に覆い被さるように涼は倒れ込んで、しばらくふたりはそのままでいた。
由貴は抱きしめたまま何も言わない。
やがて涼が小動物のようにもそもそと動く。
由貴が笑った。
「涼、可愛い」
「会長意味わかんない。涼、こんなことされたら動けないよ」
「涼抱いていると安心するんだよ。何でだろう」
由貴は身を起こして、涼を抱きしめたまま座った。
涼の手にノートとシャーペンがあるのに気づく。
「あれ?ノートとシャーペン何処から?」
「ノートは忍ちゃんから。シャーペンは四季くんから。会長、体調がわるそうだったから、涼が代わりに会長の思ったこと書いてあげようと思って」
「そう」
由貴は涼を大事にしてくれる。
キスから先にまだなったことがないくらいには。
「会長、涼のこと抱きたい?」
由貴の温もりは涼にも安心出来るものだ。
ただ、涼はそのあたりが「少女」で、キス以上の関係になりたいと思ったことがない。
由貴の方はそうではなかったから、一時期それで悩んだこともある。
ただ涼が由貴に向けてくる感情は好き以外の何者でもなくて、由貴が涼に傾ける愛情も結局変わらなかったため、関係は壊れなかったのだ。
「うん。──大人になったらね」
由貴はそういう言い方をした。
何処か遠い響きに、涼は由貴が離れていってしまうような不安感を覚えて、振り返る。
「大人ってどういうこと?」