不思議電波塔



 涼に問われると、またわからなくなる気がした。

 大人って何だろう。

 小さい頃、由貴には大人が『子供よりも知識や経験があり敬うべき存在』のように見えていた。

 でも──今の由貴に見えている大人の姿は何か違う。

 好きなように生きているように見えて無理を抱え込んでいる人もいるし、口先だけは立派で中身が伴ってない人もいる。

 わがままな子供がよりいびつな感じになってしまったような印象を受ける大人も少なくはない。

 たぶんこういうことを口に出したら生意気だとか何様だとか言われてしまうのかもしれないが。

 由貴は少し考えて答えた。

「涼を大事にしたいだけだよ。こういう気持ちで涼を抱いても後悔する」

「……」

「どういう人間が『大人』なのか、俺にもよくわからないけど」

「じゃあ、会長が『大人』になる時まで一緒にいて」

「『大人』になりきれなかったら?」

「そうしたら涼は会長とずっと一緒にいられるから、問題ないよ」

「そっか」

「……。会長、眠くないの?」

「うん…。眠れない」

「ジャスティのお話して。涼、書くよ」

「何処から話せばいいのかわからない」

「ジャスティの育ったところはどこ?」

「育ったところは──」

 由貴の中に眠る、ジャスティの物語。まだ小説には書いたことのなかった少年の話を由貴はしはじめた。


     *



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