不思議電波塔
アレクメス西海岸にある小さな島、ネムフェルン島。
潮が満ちている時は大陸との間を海水が隔てているが、潮がひいた時は大陸と陸続きになる、世界でも数少ない場所。
島に住んでいるのは老人ひとりと少年ひとり。
他に人が住んでいないのは、その島は「青龍の目」であるからだった。
人が住めば大抵、その土地は汚れてしまう。
だが人は「してはならぬ」と言われると、途端にしたくなり、闘志を燃やす類いの者がいる。
そうではなくとも、その島は、人心惹きつける美しい島だった。
「青龍の目」はそのような者の心を見抜き、要らぬことは考えぬよう島の外へ送り返した。
そうして長い間、誰も立ち入ることをゆるさぬまま、時を護り続けてきた。
「青龍の目」は、いつでも清んでいなければならない必要があった。
空気が人の目に透明であるように、世界がよく見えるように。
その島に老人が住みはじめたのは、世に彼の居場所はなく、「青龍の目」が彼を必要としたからだった。
*
涼は由貴と話をしながらそこまでの文章を書いてくれた。
だが疲れていたのだろう、やがて涼は由貴の傍らでとろとろと眠り込んでしまった。
由貴は涼に毛布をかけると優しい表情になる。
「──ありがとう、涼」
涼の持っているノートとシャーペンを取ると、由貴はノートを片手に座り直す。
自分の人生は自分で決める。
由貴はノートにつづきを書き始めた。
*