不思議電波塔



 アレクメス西海岸にある小さな島、ネムフェルン島。

 潮が満ちている時は大陸との間を海水が隔てているが、潮がひいた時は大陸と陸続きになる、世界でも数少ない場所。

 島に住んでいるのは老人ひとりと少年ひとり。

 他に人が住んでいないのは、その島は「青龍の目」であるからだった。

 人が住めば大抵、その土地は汚れてしまう。

 だが人は「してはならぬ」と言われると、途端にしたくなり、闘志を燃やす類いの者がいる。

 そうではなくとも、その島は、人心惹きつける美しい島だった。

 「青龍の目」はそのような者の心を見抜き、要らぬことは考えぬよう島の外へ送り返した。

 そうして長い間、誰も立ち入ることをゆるさぬまま、時を護り続けてきた。

 「青龍の目」は、いつでも清んでいなければならない必要があった。

 空気が人の目に透明であるように、世界がよく見えるように。

 その島に老人が住みはじめたのは、世に彼の居場所はなく、「青龍の目」が彼を必要としたからだった。



     *



 涼は由貴と話をしながらそこまでの文章を書いてくれた。

 だが疲れていたのだろう、やがて涼は由貴の傍らでとろとろと眠り込んでしまった。

 由貴は涼に毛布をかけると優しい表情になる。

「──ありがとう、涼」

 涼の持っているノートとシャーペンを取ると、由貴はノートを片手に座り直す。

 自分の人生は自分で決める。

 由貴はノートにつづきを書き始めた。



     *



< 113 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop