不思議電波塔
老人の名はセラミス・エルモード。若い時は腕のたつ服職人だった。
どんなものも綺麗に縫い合わせてしまう彼の腕は、ある時偶然、『過去』と『現在』を縫い合わせてしまうということが起こった。
客の依頼で、大切な思い出の服がほつれてしまったから、綺麗に直して欲しいという仕事を受けて、直していた時のことである。
服の一部の生地は繕いようがない破け方をしていたため、新しい布地をあてて直そうと思っていたところ、声がした。
「新しい布地はだめ」
セラミスは何の声かと思い、部屋を見回した。
もう一度声がする。
「新しい布地はだめ。大切なものを壊さないで」
頭をもたげ、問いかけた。
「私は依頼を受けて、服を直そうとしているだけだ。何故新しい布地はだめなのだ?」
「その服にぴったりの布地があるから。その服を持って、そこを発って」
セラミスは度々こういうことがあった。また、こういう声には逆らわない方がいいということも。
声の言う通りにセラミスが向かった先は、車を走らせて半日はかかるようなところだった。
大きな家だった。外から庭を覗き込むと、椅子にかけて繕い物をしている女性がいた。
声が言った。
「彼女が知っている」
セラミスは声をかけた。
この服を直す布地はないかと聞くと、女性は驚いたように逆にセラミスに聞いた。
「この服を何処で?」
セラミスがわけを話すと女性は言った。
「この服は私がある方を想い縫って差し上げたものです。けれどもこの服を見た私の友人が『これは私が縫ったものよ。私があの方にプレゼントするわ』と無理に買い上げ、友人はその人と結婚を。まだこの服が残っていたのですね」
その服を縫ったのは十年も前だという。
セラミスはその服を持ってきたのは男だと話した。
「大切な服が破れたのだと。とても綺麗につくられているので『奥様のお手製ですか?』と褒めると『違う』と。もしかしたら、彼は、この服をつくったのが本当は誰なのか、知っているのでは」