不思議電波塔
セラミスがネムフェルン島に住み始めてから、12年が経った。セラミスは72歳になっていた。
ある寒い日のことだった。まだ10月だというのに冬にでもなったかのような寒さで、目を覚ましたセラミスは変に思った。
外が変に明るい。今までにない空の色。
家の外に出ると、島の中央の泉のあたりから光があふれていた。「青龍の目」と呼ばれている泉である。
ネムフェルン島は上空から見ると本当に目の形をしているのだ。
泉の周りには豊かな緑が生い茂り、その森は「青龍の森」と呼ばれた。
セラミスはあたたかい上衣を羽織り、朝も早くから泉の方へと赴いた。
泉につくと、普段見ないものに遭遇した。
大きい蓮の葉に似た葉がところどころ水面に浮かんでいる。
「青龍の目」にこんな葉が浮かんでいるのは初めて見る。
光り輝いているのは泉の中央で朝陽を目にしているかのように眩しい。
「これはいったい…?」
セラミスが呟くと、「青龍の目」は言った。
「天命と運命を背負った者が訪れたようだ」
*
そこまで書き終えたところで、四季が部屋を訪れた。
「由貴、まだ休んでなかったんだ」
「うん。小説書いていた」
由貴のそばで眠っている涼を見て、四季は微笑ましそうにする。
「涼ちゃんて」
「うん。無邪気だよね」
「由貴は無邪気じゃないの?」
「考えることが多いから。涼見ていたら心が洗われる気がする」