不思議電波塔
「ふーん…。でも由貴がそういう人間像イメージしやすいって意外」
「現実の綾川由貴は型に嵌められた生き方を強制されているみたいで、でも本当はのびのびしていたいんだろうね」
ふわっと由貴の口からそんな言葉がこぼれた。
「ふふ。のびのびしていたいんだろうねって他人事みたいな言い方してるけど」
「今の綾川由貴を主観で背負うのはきついよ。ひとりの他人のように見ると、綾川由貴を背負わなくてもいい隙間が出来て、心に余裕が持てる。しなければならない事が多すぎるし、出来ないレベルのものを無理に任されて断るのにも労力払うし。任せようとする方は『断るより片づけた方が早い』とこちらが辟易するくらいの圧力かけてくるし」
由貴は一息に言った。
四季は「のびのびしてみたら」と穏やかに言う。
「それとも、のびのびしても圧力かけられる?」
「──うん。四季はどうしてる?つきつめたら気にしないようにするしかないんだけど」
「そうだね。抱えている自分の心を殺してでもいないと、立っていられないこともあるね」
「自分を殺すね…。わかる気もするけど。どうにもならないこともあるし」
「由貴、とりあえず起きるのは午前1時までにしよう。眠らないと僕体調崩すかもしれないし、由貴も。考え事がたくさんあるのもわかるけど、倒れてみると『自分がしなくても良かったんだ』って思うこともたくさんあるよ。だって由貴が倒れること以上に優先すべきことがあるとしたら、それは人道を無視したひどい人権侵害なんだし」
四季に言われて、由貴はふっと心が軽くなった。
「ふふ。人権侵害ね。その考え方が通じる人間ばかりではないから困ることもあるんだけど」
「人の心を悪気もなく潰せる人はいるし、そういう人は『潰れる方が悪い』としか思わないものだよ。僕は『潰れる方が悪い』とは必ずしも思わないから、その時の状況に応じて人を判断するしかないけど」
「うん。自分の感覚に頼った方が正しいこともあるね。自分の体調は自分にしかわからないのと同じで」