不思議電波塔



「由貴、大丈夫だよ」

 四季は微笑んだ。

「僕、由貴の小説も、由貴も好きだし」

 こういうことを素直に言葉にしてくれるのが綾川四季だ。

 由貴も「ありがとう」と言葉にした。

 四季の言葉で自然に大丈夫だと思える自分がいる。

 それが嬉しい。



     *



「天命と運命を背負う者とは?」

 セラミスの問いに「青龍の目」は答えた。

「幼子を生け贄に世の動乱を鎮めようとする者たちがいる。繁栄を願いながら、その繁栄は己のみの繁栄に向かい、他のものを吸い上げ、無抵抗のものを殺戮とは。ここより北、海を隔てた国であるハロンで混乱が起こっている。セラミス、一国の崩壊は秩序の崩壊を意味する。やがて世界の崩壊が起こるだろう。一旦綻びが始まってしまえば、人間とて収拾がつけられなくなるもの。暴動も奪い合いも起こるだろう。しかし、私はそなたを気に入っておる。天命と運命を背負う者とは、その者の意志に関わりなく世界の命運を定める者。多くの者の呪いであるのか、祈りであるのか、そういうものの中に生まれてきてしまった者なのだ。しかし、生まれながらにしてその運命を背負うとは酷なことでもある。私がその者を連れてきた。セラミス、この子を連れて帰り、育ててはくれぬか?出来るだけ人の手によって育てられた方がよい。そなたが大変な時は私があずかろう」

 セラミスの手にはいつのまにか幼子が抱かれていた。

 幼子はよく眠っていた。

 セラミスはその子を連れ帰り「ジャスティ」と名づけた。

 その子が天と地を正しく秤れるように。



     *



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