不思議電波塔
「青龍の目」が話した通り、やがて巷では妙な話が聞かれるようになった。
セラミスが幼子に与えるミルクを買いにネムフェリウまで赴いてみると、通りや店で人々が深刻な顔をして話しているのである。
「娘さんが拐われて、何日も経たないうちに老婆の姿にされて帰されたっていうのよ」
「そんならあの話は本当なんじゃないのか。別人を返されたんじゃないのかって話もあったんだが」
「怖いわねぇ」
年若い青年や娘が拐われ、しばらくして家に帰ってはくるのだが、それが本人ともおぼつかないような老人の姿にされて帰ってくるのだという。
それが起こり始めたのはアレクメス最北の地方のことで、徐々に南下するようにアレクメスのあちらこちらで起こるようになっているというのである。
ハロン国で起こった綻びがアレクメス国でも起こり始めているのだろうかとセラミスは思った。
世界の綻びとは裏腹に、幼子は健やかに育ち、セラミスも身体を痛めることなく働きつづけていられた。
そしてその日は来た。
世界中を蝕み始めたものが最も喰らいやすい者に向かって牙を剥いたのだ。
魔導の国リオピアが、最初の生け贄にされたのである。