不思議電波塔
フォーヌの皇帝であるシュライゼは、まともな応戦でリオピアの魔導力に勝てないのなら、カウンターのように相手の魔導の力を利用した方法で戦えないかと考えたのである。
そこで目をつけたのがキトネシスにいる「意趣返し」の能力を持った一部の民である。
敵からのいかなる攻撃もはね返すというその能力を液体や鉱石に封じ込めることは出来ないかと考えたのだ。
キトネシスの民はその独特の民族性から、他との交易に積極的ではない。どちらかというとよそ者は入れない意識が強い。
だが、キトネシスの天馬を外国に輸出している、カザファロン・セーグという資産家がいることを知り、自国をそれぞれ豊かにする取り引きをしないかと話を持ちかけたのである。
カザファロン・セーグはキトネシスの者にしては、野心も権力に対する興味も人一倍強かった。
シュライゼはまず、カザファロンに「金に糸目はつけないからリオピアの薬や魔導石を出来るだけ多く手に入れて欲しい」と話をした。
フォーヌとリオピア間での取り引きは、ほぼあり得ないからである。
キトネシスの資産家からの破格の取り引きの話に、リオピアの民の中にはカザファロンと手を結ぶ者も出てきた。
薬や魔導石の取り引きは本来国同士が行うものである。個人での取り引きは違法にあたるのだ。
だが、このような個人間の小さな取り引きが、世界を巻き込んだ混乱になるとは誰も予想はしていなかった。
そうしてリオピアの薬や魔導石を集めている傍らで、シュライゼはカザファロンを通じて「意趣返し」の能力を封じた薬や魔導石を手に入れることにも成功し、それをフォーヌに持ち帰り、それをあるものに変えたのである。
リオピアのそれと意趣返しのそれとを融合させ、薬や魔導石の提供者に「意趣返し」として、提供者本人を傀儡にして混乱させることを目的とした新薬を作ったのである。
シュライゼにとっては大きな賭けだった。
だが、その賭けがリオピアに大きな打撃を与えたのである。
新薬を使われ、敵味方の判別なく攻撃したり、虚言をはじめたりする者に、リオピアは内部から崩壊しはじめ、その後のフォーヌからの攻撃に万全な態勢では応戦出来なくなったのである。