不思議電波塔
冬だった。12月。
外は雪が降っていた。
フォーヌからの軍勢が都に向かっていると聞き、リオピアの王であるユリウスはノールを呼び出した。
ノールは庶民の出でありながらユリウスに資質を見出だされ、宮廷に上げられた。
ユリウスのもとに来た時、ノールは7歳。それから1年が経とうとしていた。
ノールは幼いながら大人にひけをとらぬほどの魔導力の高さと忠誠心を持っており、第1王子ユニスの側仕えの任を任されていた。
「フォーヌの軍勢がこちらへ向かっている。私はユニスとリュールをアレクメスの方へ逃れさせたい。幸いそなたの属する魔導士官の隊の者たちにおかしい兆候が顕れている者はいないようだ。ノール、そなたには姿を変えられる能力がある。ユニスの囮となり、フォーヌの軍勢を攪乱することは出来るか」
「──。出来ます。王様はどうなさるのですか」
「私はここに残る。王が捕まらなければ戦は終わらぬ」
「…王様」
ノールは愕然としてユリウスの顔を仰ぐ。ユリウスは冷徹に言い切った。
「これは命令だ。行け!」
「は!」
ノールは何が起こったのかわからないような気持ちで、踵を返した。走り出した。
今、何と言った?王は。
早鐘のように胸が鳴っていた。
きつく唇を結ぶ。揺らぐな。王に忠誠を誓う者がこんなことで揺らいではならない!
ノールは属している隊の集まる部屋に向かい、一声を放った。
「王命だ!出る!私がユニス様の囮になる。攪乱せよとの仰せだ!」
ノールの姿がユニスの姿に変わった。
強い意志を纏ったその姿に、魔導士官たちも気合いが入れられたように立ち上がる。
ノールの隊は魔導力の高い精鋭の部隊である。
応戦することになってもそう簡単には突破されないだろう。
こうしてリオピアきっての精鋭部隊が王宮を出た。