不思議電波塔
「ジャスティ、そういう声が聴こえるのか?」
たとえば精霊がセラミスに話しかける時、その声を聞き取ることが出来るように。
セラミスにはジャスティの言うような「誰かが泣いてる」声は聴こえなかった。
ジャスティはセラミスの言葉に頷く。
「僕はどうしていいのかわからない」
青龍の目がジャスティの代わりにセラミスに答えた。
「──セラミス」
「はい」
「ジャスティにはふたりの声が聴こえている。ひとりはそなたの言うリオピアの王子。もうひとりはジャスティの妹のことだ」
「ジャスティに妹が?」
「そうか。そなたには話してはいなかったな。国を追われるようにしてアレクメスの地を踏んだ、ジャスティの妹を連れる者が、このネムフェリウの近くまで来ているのだ。だが──」
青龍の目の言葉が終わらぬうちに、ジャスティが倒れ込んだ。
「ジャスティ!」
セラミスが驚き、ジャスティを抱き起こす。
ジャスティはぐったりとして呟いた。
「…助けて。イレーネと…ユニス」
青龍の目が言った。
「同調連鎖だ。しかし、幼子の身に同時にふたりの意識が流れ込むのは混乱と消耗をもたらせる。私はジャスティを眠らせる。この綻びが終結を見るのか、このまま滅んでゆくのかはわからぬが、ジャスティの命がこのまま絶たれれば、それはこの世界の死を意味する。セラミス、そなたは行って、リオピアの王子に会うがよい。ジャスティの妹はまだ幼い。戦うことは出来ぬだろう。王子なら連れて行けるはずだ」
「待ってください。連れて行くとは?何処に行くというのですか?」
「この世界の綻びをとめようとする者がいる。数多ある物語を結び、混乱を終わらせてゆこうと願う者。その者に会うのだ」
セラミスは答えた。
「この混乱の収束を願うのは私も同じ。それならば私はここを発ちます。王子は何処にいるのですか?」
「ケファウル」
青龍の目はジャスティを抱き上げ連れて行った。
セラミスの手には1本の杖があった。
*