不思議電波塔
由貴と忍が行ってしまって、しばらくしてから、クマの夫婦が外側の階段を登ってきた。
「クマさん!」
涼は絵の向こうのクマに話しかける。奥さんクマが絵の中の涼に気づき、ぺこりとお辞儀をした。
『どうも。この先が元の世界に続いてるのかしら?』
「はい。そうだと思います。会長はその階段から上に行きました」
『ありがとう』
「あの…。ぬいぐるみのクマさん大丈夫ですか?」
ぬいぐるみのクマとキノコは、本物のクマの背に乗り、ぷすぷす黒焦げになっていた。雷が落ちたらしい。
奥さんクマは笑った。
『私の背に乗るくらいの元気が残っているなら大丈夫でしょ』
『うるへー』
涼も笑って、気をつけて、とクマの夫婦に手を振った。
奥さんクマはクマとは思えないスピードで駆け上がって行った。パワフルだ。
左右の階段の絵は最後は1つの絵に繋がっているようだった。
最後の絵は、塔の最上階。全天の絵になっていた。
由貴と忍、クマの夫婦は四季のワルトシュタインにやがて追いつき、最上階の15階にたどり着いた。
だが、そこはどちらも行き止まりだった。
15階には絵がそれぞれ出現したので、涼が由貴と忍に伝えた。
「会長、忍ちゃん、最後の絵に、文字が現れているの。答えて」
『いいよ』
『いいわ』
「まず、会長から。タロットカードで覚えている大アルカナカードを全部答えて」
『愚者、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、法王、恋人、戦車、力、隠者、運命の輪、正義、吊るされた男、死神、節制、悪魔、塔、星、月、太陽、審判、世界』
由貴は涼に教えてもらったカードの名前を難なく列挙する。
「会長、正解」
由貴のいる15階の部屋の壁に、大アルカナのタロットカードが現れた。
「次は忍ちゃん。そのカードに対峙したカウフェリン・フェネスの人たちの名前」
『ユニス、イレーネ、リュール、ルナ、フィノ、ジャスティ、カイ、ノール』
「忍ちゃん、正解」
忍のいる15階の部屋の壁に、ユニスたちのカードが出現した。
「会長、門に出会った順に正確にカードに触れて行って。忍ちゃんは、門に対峙した人の順に」